昔ほど熱はないが、週末のボクシングはどっと疲れました。痺れました。自分のために振り返り。
キコ・マルチネスvs.阿部麗也
阿部がベテランのキコを下し面目を保つとともに、順当なら世界戦に駒を進めた。王者はルイス・アルベルト・ロペスだが、世界王者を嘱望されているアイドル、マイケル・コンランとの試合を敵地で控えているので王座交代も大いにありえる。
阿部の良さはスキル、アウトボクサータイプにしてパンチもキレがあるので相手を効かせることが出来る事。しかし見た限り戴冠は難しいかギリギリのラインといえそうだ。ルイス・アルベルト・ロペスが陥落する可能性は高いが最近のフェザー級王者に大物はいないにしても、マウリシオ・ララしかりロペスしかり、異様にタフでエネルギッシュだ。ロペスは過去にルーベン・ビラに完敗していることから技術戦には弱い。阿部にとってはこっちの王者が都合がいいが、恐らく同じタイプのテクニシャン、マイケル・コンランになっちゃうかな。コンランだと人気者なので渡英ということになるかもしれない。厳しい戦いになるだろう。
佐々木尽vs.小原佳太
戦慄のKO劇となり、那須川目当てのファンにとってボクシングのインパクトを一番与えた試合にみえた。2回に小原がタイミングのダウンを奪ったが、その後の佐々木の反撃、最後のアッパーで萎縮してしまい、3回の小原は怯えてしまっていたようにおもう。
佐々木は減量苦から解放され、強くなった、過去の敗北はチャラにしていいほどの凄みを纏ってきた。まるでカネロのようなファイトぶりだったが、世界のウェルターの壁は高い。センス、勢い、感性だけでやっているようで、それが強みとも弱みともいえそうだ。パワーはあるが身体は緩い。大きくもない。八王子中屋だっけ?ここで世界のウェルターの頂を目指すのは現実的ではない。バージル・オルティスあたりとやったら丸裸にされてしまいそうだ。しかしまだ21歳で末恐ろしいほどの伸びしろを持つので、厳しい環境で才能を伸ばして欲しい。
佐々木の魅力はタイソンと同じ「恐怖」。これを世界のウェルターで表現できるなら期待は出来る。
那須川天心vs.与那覇勇気
やはり異次元の格闘センスを持つ男だった。与那覇は日本タイトルにも挑戦したことがあるんだっけ?その試合より完敗だっただろうから那須川は既に日本王者になれそうだ。しかしまだボクシング仕様でない他の格闘技の動きが目立った。反応が良すぎるし、結果が出ればボクシングの型にはまる必要はないが、踏み込みがなく手打ちなので、圧倒、効かせることは出来ても倒す、意識を断つまではいかない。日本のシャクール・スティーブンソンかというべき反射神経とディフェンスセンスを持つので、どうせならシャクールの領域まで打たせないスタイルに特化すればいいとおもう。シャクールもあまり踏み込まないから隙がないともいえる。
井上拓真vs.リボリオ・ソリス
こんなもんじゃないだろとずっと期待しているが、もう無理だろうか。終始攻めて、ダメージもないソリスの勝ちにしてあげたい試合だった。打たれない事に意識が行きすぎて攻撃はカウンターしかない。ウバーリ戦の呪縛か。兄や寺地のように、自分から仕掛けていくことが出来ない。続かない。でもなぜか解説に絶賛される。歯がゆい。
寺地拳四朗VSアンソニー・オラスクアガ
オラスクアガは未来の王者クラスだったが、寺地が今じゃないと終始押し切り、才能を摘み取った。素晴らしい積極性だった。童顔で肌も真っ白な寺地だが、矢吹との初戦もダメージはバッティングであり、気が強いだけではなく身体も強い。なかなか打たれ強い。あのジャブとハイテンポ、リズムはスペシャルだ。以前の寺地よりもずっといい。中谷もスケールが大きいが、今は井上尚弥に継ぐ存在が寺地だろう。もう30代なのでやりたい事を全部やって欲しい。素晴らしいファイトでした。
オラスクアガは代役のプロ5戦の選手だったので、この試合のレベルが世界に正しく伝わったかは疑問。
シャクール・スティーブンソンVS吉野修一郎
シャクールの凄さばかりが目立ったが吉野は恥じることはない。シャクール相手にあそこまで踏み込んで攻めた男はいない。恐らくシャクールこそライト級のトップ、P4Pナンバーワンクラスなのだ。体重が一致したと仮定して、井上尚弥でも勝てるかしらというくらいのディフェンスと無駄のない完璧なファイトでした。誰がシャクールに勝つのだろうかというより誰が一発当てるのだろうという次元。
セバスチャン・フンドラVSブライアン・メンドーサ
タワーリングインフェルノが倒壊した。ブライアン・メンドーサって知らないなぁ、伏兵だよね。フンドラは体格が超強みだったが、接近戦の激闘型であり、ダメージ蓄積型のファイトをしてきた。負けるならこういうパンチ、こういう形だろうというパターンだった。しかし人気は持続するだろう。
ムロジョン・アフマダリエフVSマーロン・タパレス
アップセットと言われているが個人的には想定内。フィリピン人にはムラがあり、気持ちを入れ替えていい環境でトレーニングすると化けるのはパッキャオやカシメロと同じ。そしてタパレスには恐ろしい強打もある。
ある意味体格もスタイルも同じタイプのサウスポーの強打者であり、ムロジョンは強打で威嚇するタイプだが、それが通用しないとダニエル・ローマン戦のように接戦となる。タパレスが序盤に飛ばしたのが功を奏したのだろう。採点結果からどちらに転んでもいい接戦だったのだろうが。
タパレスは危険だし、今後益々腕を磨くだろうが、ぶんまわし系のフッカーという点は変わらない。井上のライバルとしては、過去の敗北や失態があるので興ざめだ。
亀3には厳しい相手だろう。当て逃げ判定しか活路がない。
岩佐には現役続行を考え直して欲しいが、最後の試合としている相手が鬼門だ。