タイトル通り、意識、スタイル、進化したからこそ生まれた劇的勝利だったとおもいます。全ての日本人ボクサーのお手本たる準備、ファイトでした。
フロリダのキシミー市民センターで、伊藤雅雪はクリストファー・ディアスに12ラウンドユナニマスデシジョンで勝ち、空位のWBO世界スーパーフェザー級王座を獲得した。プエルトリコ人が多く住むこの場所はディアスにとってはホームのようなもので、大歓声に迎えられた。伊藤はアンダードッグでした。
ルディ・エルナンデスをセコンドにつけた伊藤は試合全般を通じ、特に前半をアグレッシブに攻めた。ディアスはジャブを無効化したかったが、伊藤のジャブにバックステップを踏まずにはいられなかった。
4ラウンドには何発もの右を当て、伊藤はディアスからダウンも奪った。
ディアスは勇敢に戦ったが、伊藤に右を何発も返され、左目下が腫れあがった。
ダウンを屈したディアスは距離を詰めてプレスを強めたが、伊藤は正確なパンチを集めた。スコアは118-109、117-110、116-111。24勝12KO1敗1分とした伊藤は目下8連勝中だ。
伊藤
「自分自身を信じていました。世界王者になると確信していました。初回で自分のボクシングが通用する事がわかった。ダウンをとりましたが、この試合は接戦なので集中して彼をノックアウトしようとおもっていました。とてもいい試合でした。ディアスに敬意を表します。彼は戦士でした。夢が実現しました。ビッグファイトをしていきたいです。」ディアス
「このままでは終われません。より強く、ハングリーな気持ちで戻ってきます。私は約束を果たします。世界王者になる約束を。」ディアスはプロになって以来初の敗北でした。23勝15KO1敗
伊藤VSディアスの前振りはたくさん書いてきた。
他のマニアも言うように不利ではあるが、勝てるかもしれないと。
そして、理想通りかそれ以上の内容で伊藤は大きなアップセットを起こしてくれました。
勝因は
- この試合、あるいは来るべき世界戦に備え海外トレーニングを断続的に行っていたこと
- ディアス対策がはまったこと(接近戦対策は見事でした。ディアスはたしかに無策でした。)
- 機先を制するがごとく初回にアタックしペースを握れたこと
- 伊藤得意の右ストレートを躊躇することなく出したこと
(ワンツーで終わらず、スリーフォーファイブと出し惜しみなく得意パンチが出ていました。) - なんといっても己を信じた精神力
だと総括します。
この試合に向けての準備が違いました。
伊藤を知るマニアの方にはわかるとおもいますが、以前の伊藤だったら勝てなかったでしょう。センスの良さに積極性と倒す意思が加わり、敗戦を糧に強いフィリピン人相手に倒すボクシングを再構築していました。このキャリアがあったからディアスの強打に対抗できたのではないか。
一方のディアスは8回以上を経験したことがないという勢いのまま、いつものようにパワフルに襲い掛かればなんとかなると信じていたのではないでしょうか。基本スペックの強いボクサーという印象は変わりませんが、ディアス相手に全く引かずにジャブやストレートを打ち返す相手などいなかったのではないか。伊藤が対策にあげた接近戦、もみ合いの際もアッパーやボディを効果的に入れていたのは伊藤で、ディアスは無策でした。小細工無視で能力だけで勝てると。
このブログにも貼っていますが、個人的に内藤律樹の後援会をしています。彼と凌ぎを削った尾川や伊藤の世界戦が先に決まり、2人とも結果を出しました。(尾川は無効試合になりました)後援会の中には、ボクシングに詳しくなく、ノリだけで楽しんでいる人もいますが、詳しい人は、内藤に世界は厳しいんじゃないかと言ってきます。
自分は
「たしかに厳しい。ロマチェンコのような別格もいる。けれど彼ら(内藤、伊藤、尾川)のレベルは世界に拮抗している。特に内藤の場合は基本当てさせないボクシングなので、あとはもう一歩の踏み込みやあと一発増やすコンビネーション、攻防を融合させ、より攻撃部分を伸ばして相手を倒しきるスタイルに変貌できればなんとかなるんじゃないか、あるいはメイウェザー並にアンタッチャブルを完成させるか」
と答えてきました。
その後、減量苦から階級を変えた内藤は未だ同じ課題を抱えたままだと感じますが、伊藤と同じような進化を目指している事でしょう。ライバルたちの活躍に刺激を受けているに違いありません。
本場の識者が伊藤のボクシングにアマチュアベースがないのを驚いていたといいます。
そのくらい、今アマチュアベースのないボクサーが世界王者になるのは難しい時代です。
日本には時々こういうボクサーが現れます。日本でのキャリアが地味でも確実に実りになるレベルだからでしょう。木村も伊藤も試合毎に強さと逞しさが増しています。アマチュアベースがないだけに一戦毎に急成長する伸びしろがすさまじい。(木村はアマが少しあるみたいですが)
スーパーフェザー級は特に茨の道で、対抗王者も怪物的ですが(特にジェルボンタ・デービス)伊藤には今後も大暴れして欲しいと願います。この日の試合を観てもなお、対戦を希望するボクサーは目白押しだとおもわれます。
この日の勝利は日本に招聘する世界戦の何倍も価値があるビッグアップセットです。特大ニュースです。
ボブ・アラムの選手が負けて、ボブ・アラムが伊藤に関心を持つ(イケメンで華があって強い、金になるかも!)
実に痛快、幸せな瞬間をありがとうございました。
自分は今でも近藤はマイキーよりリピネッツを追い詰めたとおもっております。
日本人が海外で通用する逞しい時代になってきました。
この日地元では台風一過、盛大な祭りが行われていたが、正午、この祭りよりドデカいことを成し遂げた日本人がいることをどれだけの人が知っているだろうと思い、感傷に浸りながら、午後の露店を巡っていました。
すごい試合をありがとう。