田中恒成VSヤンガ・シッキボと追悼モイセス・フエンテス

世の中サッカー一色ですが、ここはボクシングのみ。

モイセス・フエンテスがわずか37歳で死去したとのこと。悼みます。

元々WBOミニマム級のファイターで、イバン・カルデロンに勝ったり、ドニー・ニエテスと引き分けたりしていた2階級名王者。そのころ日本はWBO未加入だったので、無縁の存在だったが、キャリア後期に階級を上げ、日本人と絡むようになりました。日本人には完敗しましたが、もはや全盛期、適正体重ではなかったのかもしれません。

キャリア後期の敗北がどれもダメージを残す痛烈なもので、ロマゴンに敗れてから3年後の無敗プロスペクトとの試合、これが不要だったと悔やまれます。偉大なロマゴン戦が最後でよかった。ボクシングは生死をかけた戦い、一寸先は闇です。彼の雄姿とキャリアを忘れず、教訓にせねばなりません。

さて、日本人ボクシングファンには13日の井上尚弥のバンタム統一をかけた試合、大晦日の井岡の統一戦が今年最後の楽しみですが、フェンテスと拳を交えた田中恒成の試合もあります。

12月11日

田中恒成VSヤンガ・シッキボ

シッキボの戦績は17勝1敗1分け。KO勝利数5と少ないが、高い技術で白星を重ねてきた。主戦場が南アフリカのため、日本ではほとんど知られていないが、地域タイトルを複数手にしている決して侮れない相手である。

時は流れ、日本のスーパースター、井上尚弥に継ぐ日本の至宝は中谷潤人だ、寺地拳四朗だ、いや井岡でしょ、という感じですが、少し前までは田中恒成一択でした。見栄えの良さでは今もそうだろう。しかし全勝の若き3階級王者は井岡との試合でノックアウトされてから、軌道修正を余儀なくされた。

田中恒成の特徴はスピードと切れだが、一番深い部分ではドツきあいのファイターであることだ。備わった身体能力、スピードで圧倒してしまえば快勝、圧倒劇も多いが、それがはまらないと強引で荒っぽいドツきあいに突入する。次元の違う強さと才能を発揮することもあれば、僅差の泥試合もまた多いのが特徴だ。

フェンテス戦やアコスタ戦で覚醒したかとおもいきや、次のパランポン・CPフレッシュマートとの試合で大苦戦、強引、豪快にノックアウト勝利したものの、両目に眼窩底骨折を負い、その後はドツきあいの根性ファイトが目立つようになってきた。木村戦、田口戦、ジョナサン・ゴンザレス戦、いずれも、圧倒したいが上手くいかず、殴り合ってなんとか打ち勝ってきたという印象だ。

そして迎えた井岡とのビッグマッチでは、田中の決意と仕上がりは素晴らしかったが、勢いだけで引き出しの多い井岡に完璧に攻略されて初黒星。

そこから、どう修正するかと見守っていたが、石田匠との再起戦でパッとせず、無敗の橋詰将義を圧倒したものの、あの試合は開き直って昔の田中恒成に戻しただけのように映った。

恐らく、田中の魅力は変わらず、身体能力に頼ったスピードときれ、パワーファイトで圧倒するか、苦戦してもそこを強みに強引にねじ伏せるという点だろう。そこに特化していくんだという決意が感じられる。

それでいいし、それが一番の強みだとおもうが、シッキボというのが、長身のテクニシャンぽく、KO率が低いというのも逆に不気味といえそうだ。遠く南アフリカからやってくる、シッキボ陣営は田中の特徴をよく理解しているだろう。

スピードと迫力で圧倒、というAプランが通じなかった時の田中の対応力、または勢いだけの強さから進化した姿が見れるだろうか?

恐らく、橋詰将義戦の延長でシッキボを圧倒しにかかるとおもわれるが果たして・・・

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