アゼルバイジャンのバクー出身でウクライナで活動するWBAフライ級王者。13歳でボクシングを始めたという記載しか探せず謎が多い。寡黙なのだ。
アルテム・ダラキアンのキャリア最大のチャンスは当時の王者、井岡一翔への指名挑戦権を得た時だったが試合が実現することはなく井岡は引退してしまった。しかしその後元王者のブライアン・ビロリアとの王座決定戦のチャンスを逃さなかった。
https://www.youtube.com/watch?v=-joSwpxQiT0
現在ウクライナには4人の世界王者がいる。ワシル・ロマチェンコ、オレクサンドル・ウシク、オレクサンドル・クヴォジク、そしてアルテムだ。
アルテムは彼らと同じ年齢で、ウクライナ代表チームとして同じ歩調を揃えてきたが、アマチュアで偉大な実績を残すことは出来なかった。仲間のスターとは一線を画していた。
王者となったアルテムはドネツクのユニオンボクシングプロモーションと契約を結んだ。
専門家の間ではアルテムの事をまるで小さなロマチェンコのようだと例えられてはじめているが、ずっと日陰の存在だったアルテムがそう言われることが光栄かどうかはわからない。
アルメニア出身のウクライナボクサーは人生を大きく変えていくかもしれない。
アルテム・ダラキアン
Artem Dalakian
19勝14KO
31歳
アマチュアの何かの大会でアムナットに負けた記録があった。
なんとなく彼の最新ファイトをみた。ノラリクラリではあるが圧勝、圧倒的である。彼のファイトはかなり独特だ。まずガードをしない。距離をしっかり管理してリングを広く動き回り、いきなりズドンと打ち込んでくる。そして必ずその場にはとどまらず身体を回り込ませて引いていく。回り込んだ瞬間もズドンとボディや顔面に嫌らしくパンチをねじ込んでくる。当然ボディワーク、スウェーなどは柔軟だ。
ノーガードのスリックな黒人的ハイテクボクシングかといえばそうではなく、流れるようなコンビネーションとか華麗なディフェンステクとかではない。距離のコントロールとリング捌きと身のこなしで自分だけ打って打たせない。スイッチヒッターで左右関係ない。
とても追いかけにくい、やりにくいスタイルだ。
横への動き、身体の回り込みはなるほどロマチェンコのようだが、彼のようなハイテクに設計されたコンビネーションやハンドスピードはない。いきなりドスン、一発が重い。基本的にはボディパンチャーだろうか。ロマチェンコよりはパワー優位な試合ができる。
静寂からの突然の暴力のような他にいないタイプのファイト。
やりにくいだろうな、リズム狂うだろうな。
このスタイルで正攻法に強いブライアン・ビロリアも攻略した。
デンナパー・キャットニワットはタフに耐え抜いたが全くやりたいようにさせてもらえなかった。
164センチと小柄だが、筋肉量は多くパンチはキレるというより重そうで、フィジカル、腕力だけで相手をねじ伏せてしまう強靭さがある。ボディが強いが突然乱れ打ちのように打ってくるストレートやアッパーも自在だし一々強烈だ。
知名度もなく強そうで交渉も難しそうなミステリアスな東欧の選手、あえて狙わない、相手にしたくない王者かもしれないがフライ級が日本の伝統であるならば戦ってみて欲しい王者だ。
チャーリー・エドワーズよりも屈強で複雑
モルティ・ムザラネは足で翻弄してしまうだろう。
田中恒成、どうだろう。
優雅ではないがハメドっぽい才能を有している。
このアルテム・ダラキアンこそ、フライ級のキングではなかろうか。
地味な防衛戦でも一番相手を圧倒しているよ。
ウクライナでもちゃんとマイケル・バッファー来ているよ。