
私はもう井上尚弥の活躍を見届けて、ボクシングオタクの道を降りようと考えているが、さらに次世代のプロスペクト。アマチュアでの世界的な実績では井上を上回る堤駿斗のデビュー戦。
過去の日本人のデビュー戦の相手としては一番ハイレベルでリスキーといえた。ジョン・ジェミノは敗戦多い叩き上げだが、強打を武器に世界ランカーを何度も食ってきたアップセッターだ。
安定したスキルと危機管理能力で、判定で堤が勝利したが、インパクトを与える内容にはならなかった。試合中両拳を負傷し、強く打てなくなってしまったようだ。そうしたアクシデントも含め、ラウンド数、ジェミノのプロ特有の強さもあり、プロの洗礼を浴びたと言って過言でない内容だ。
井上尚弥のデビュー戦を見たときでさえ、個人的には、海外でよく見かける、スピードと反射神経全開のイキのいい選手、格下には強いがプロの猛者には苦戦しそうな一本調子のファイターくらいにしかみえず、辰吉の方がすごかったなと感じちゃったくらいだから見る目がないのだが、堤駿斗をみていると、素晴らしいファイターだが、際立った特徴のない、誰とでもかみ合うタイプにみえてしまった。
井上尚弥よりも、ジムの先輩、井岡タイプのファイターなのかもしれない。
ジェミノが強かったといえばそれまでだが、井上や辰吉がデビューした時は、とにかく相手を圧倒し、話にならないくらい打ち負かし、ノックアウトで勝つのが当たり前みたいな勢いがあった。それに比べ、堤駿斗のファイトは丁寧だが大人しく、勢いや爆発力を感じさせるものではなかった。
アマチュアで世界的なトップファイターと拳を交え、分厚いキャリアを積んできた堤が一目置くファイターはシャクール・スティーブンソンだという。
相手に何もさせず、一発も被弾せず、別次元の目と距離感とディフェンスでクールに勝つスタイルのシャクール。恐らくシャクールがジョン・ジェミノを相手にしても、判定だろうなとおもうと、堤のファイトも納得だが、現状はシャクールと違い、堤のスタイルは誰とでもかみ合う、それなりに被弾するようだ。日本でなければフルマークほど一方的な内容ではない。
いずれにしても、デビュー戦でこの相手を乗り越えた実力はホンモノの証だし、素晴らしいプロの洗礼を受けただろうし、これから、KOしたり、苦戦したり、様々な経験を積んで世界に羽ばたいて欲しい。
恐らく日本のフェザー級は、現在トップのファイターよりも、堤や大橋ジムの松本ら、次世代の若者の方がすでに上か、すぐに逆転できる状況にある。
あまり出世を急ぎすぎず、地道にキャリアを積んでいけば、いつ以来?か忘れてしまった、フェザー級の世界王者が日本でも誕生するだろう。(長谷川穂積以来かな)
世界的トップアマチュアで、東京五輪で銀メダルを獲得したデューク・ラガンでさえ、プロでは苦労している。
7勝1KO
パワーレス、あるいはKOに結び付けられないのが、課題だろう。
アマチュアの実績が絶対ではなく、プロのファイトにいかに順応、適応、進化していくかが鍵だ。